遠く、儚く。




2時間半ほどドライブして、途中で昼食を取った後、海の見えるホテルに到着した。

明らかに奮発したであろう部屋だ。オーシャンビューを見て、成瀬が歓声を上げる。



「樹先生……絶対高いでしょ…ここ…」
「ひみつ…笑笑」
「絶対高いし…。」
「俺が来たかっただけだから…。行き先も俺が勝手に選んだし。一緒に来てくれてありがと、なるちゃん。」
「こ…こちらこそ…。」

「今日はクリスマスイブじゃん??だからちょっとだけ贅沢して、ゆったりしたかったんだ。」
「そっか…。」
「温泉もあるから。一緒にゆっくりしよ?なるちゃんも今月全然休めてなかったでしょ?」
「うん……」


樹が成瀬の手を取り、さりげなくベッドの方に誘導する。
驚いた成瀬がちょ……こんな真っ昼間から……?!?!と声を上げるのを聞いて、樹が吹き出す。


「なーるちゃん??何考えてるの??疲れてるだろうと思ってマッサージしてあげようと思ったのにぃ〜 もしかして違うこと期待してた?? 笑笑」
「んなことっ……!!」
「そんなことない?ほんと??笑」
「からかわないでよっ……恥ずかしい…」
「ごめんごめん…可愛いすぎてつい…笑」



ベッドに座った状態で、樹が成瀬の顔を覗き込み、成瀬の目をまっすぐ見つめる。成瀬は照れたようにすぐに視線を逸らそうとするが、樹が成瀬の顎に手を添えて自分の方を向かせる。

自然とキスが始まり、2人は夢中でお互いを貪り始める。
顔が熱かったのが…全身に広がり…そして徐々に下半身に……

ここまで来て成瀬は慌て始める。
ちょっと待って……もしかしてこのまま……?!
ダメダメダメ!!! シャワーは…?!?!
でも…別に脱がされたとかじゃないし……先走ってまた笑われたら……

成瀬の顔が曇ったことに気がついた樹も手を止める。軽いキスを数回して成瀬を起き上がらせる。



「温泉入りにいこっか?なるちゃん…笑」
「あっ……うん。」
「続きは…あとで。ね?」
「う……うん……//////」



2人は別れて大浴場にそれぞれ入ることにした。
温泉に浸かりながら、成瀬の頭の中は樹でいっぱいだ。
想像しては頬が赤く染まり、耳まで熱が上がってくるようだ。樹が自分の目を真っ直ぐに見つめるシーンを思い出しては悶絶してしまう。

早い時間帯だったからか、大浴場に誰もいなくて本当によかった。下手したら変な人に間違われてしまうかもしれない。

約束の時間よりも30分ほど先にお湯から上がり、ホテルが貸し出している色浴衣に着替える。簡単にメイクも直して、髪はお団子スタイルに。時間に余裕を持って準備を始めたのに、約束の時間があっという間に過ぎてしまい、成瀬はバタバタと大浴場を後にした。



「ごめん…遅れて…!」
「うんうん。全然大丈夫。僕も今出てきた所だから。」
「そっか…」
「浴衣可愛いね…すっごい似合ってる。」
「そう…かな…?樹先生も…似合ってるじゃん。」
「やっぱ浴衣着ると休みに来た〜っていう気分になるよね?」
「うんうん。」
「戻ろっか??夕食は18時にしておいたから、1時間くらい余裕があるから散歩に行く??」
「うん。夜にはイルミネーションもあるんだって!」



子どものように目を輝かせて話す成瀬を、樹が愛おしそうに見つめる。勇気を出して誘って良かった…一緒に来れて良かった…。