遠く、儚く。




お酒の影響もあってなのか、昔馴染みの仲だからなのか隼人には気持ちを正直に話せてしまう。2軒目、3軒目を回った後家路に着く。


じゃあ私こっちだから!じゃあね〜と成瀬が言い背を向けた成瀬を隼人が引き留める。


「俺を好きになればいいのに!俺ならそんなふうに傷つけたりしない…!」
「……え?」

「15年前のリベンジ……しちゃだめかな?」


隼人が成瀬を抱き寄せる。
成瀬は驚いたが、やんわりと隼人の腕を振り解く。


「ご……ごめん。今は樹先生のことで頭がいっぱいで…。」
「分かってる…。でもあの人の横で苦しむくらいなら……俺のところに来て欲しい。考えておいて。」



成瀬に背を向けて隼人が歩き出す。
成瀬は呆然としながらも、抱き寄せられた時の感覚をどうしても樹と比べてしまう。

やっぱり…自分は樹しかダメなのかも。
隼人はいい友達だし、いい人だと思ってる。だけど…異性として見れるかと言われるとよく分からない。
いろんな考えがぐるぐると頭の中を巡る。


いつの間にか自宅マンションに着いていた。なんだかんだでもう2週間近く樹とはまともに話せていない。

今日は非番で家にいるはず…。
インターホンを押してみようか… いや迷惑かもだし…
やっぱり押そうか…… いややっぱ無理…!

ダッシュで自宅に戻ろうとした時……
ガチャッと玄関のドアが開く。



「なるちゃん…」
「いっいつきせんせ……こんばんはー…はは…」
「帰り?」
「そ…そうそう!帰るねー!」
「ちょっとうち来ない?」
「えっ……何かあった?」
「なるちゃんと話したくて。」
「あ…別にLINEくれればいいのに……」
「顔見て話したくて。」


断る隙を与えない樹に圧倒され、新見宅に入る。


「…お邪魔しまーす。」
「どうぞ…」
「あれ…何か具合悪いの?顔色悪いけど…」
「うん…」
「どうしたの…?」
「あのさ…今週の土日空いてる??」
「土日は…特に予定ないけど?何で?」
「なるちゃんとデートに行きたくて。今回は2人で。」
「あぁ……」
「ダメ??」
「律と柚の予定もあるから確認してみないと…」
「先に2人にはOKもらった。」
「えっ……あ…そうなんだ…デートか…デート」

「うん。僕の車で伊豆に行こうと思うんだ。一泊二日なんだけど…」
「と…泊まり?!」
「嫌だ?」
「嫌じゃないっ……けど…いきなり何で??」
「2人でゆっくり話したくて。」
「あぁ…なるほど…」
「それでもいい?」
「うん……」
「じゃあ今週の土曜日…もう明後日か。朝10時に迎えに行く。」
「分かった…てか元気ないのどうしたの…?」
「いやもう大丈夫。良くなった。また土曜日に会おう。」
「…分かった。お休み!」
「お休み。」



自宅に戻るなり自室のベッドにダイブする成瀬。

デート?!お泊まり?!つまり旅行?!?!
OhhhhhMyyyyyGooood!!!!!

2人でドライブ?!
何だかんだ律と柚も含めた4人で出かけることばかりで2人きり何て、あの一緒に居酒屋に行った時以来だ。

何着て行こう……
何持っていけば……?



ハイテンションでクローゼットをひっくり返すように服を漁る成瀬だった。