数日後……
樹がたまたま深夜に帰宅した際に、マンションの入り口で成瀬と再会した。
「成瀬ちゃん今日はありがとう!またね!」
「あ…うん。気をつけて帰ってね。」
「ほーい!またね!」
成瀬を見送りに来た時思われる男ともすれ違った。
あの研修医か……
2人…どういう関係だ……?
心に大きくざわめき、焦りが生まれる。
「なるちゃん久しぶり。」
「あ……樹先生。久しぶりだねー!」
秋にしては薄着だし……
あの男は誰?!と聞きたいのをようやく呑み込む。
「仕事の帰り?遅いね…」
「あ…そうそう。仕事終わった後に友達に軽く一杯飲もうって言われて…」
「へーーそうなんだ。よかったね。」
エレベーターで7階に到着する。
じゃあおやすみなさい〜と言って自宅に入ろうとする成瀬の腕を掴んで制止する。
「えっ…」
「ねえ…ちょっとうち来ない?」
「えっと…今日はちょっと遅いし…」
「なるちゃんどうせ早く寝ないじゃん…笑 嫌??」
「嫌じゃ…ない…」
「じゃあ入って?」
突然のことで驚いたのか成瀬は固まっている。
ちょっと強引すぎたかと反省する。でも自分だって男だ…男に見てもらわなきゃ困る…。
成瀬の手を引いたまま家に入る。
玄関の鍵を閉めてすぐ成瀬を抱きしめて壁に押し付ける。
首元に顔をうずめると、ふわっと優しく甘い香りが感じられる。
「えっ……ちょっ……」
「あいつ誰……?」
「えっ…えっと…小学校の同級生…!」
「同級生なの?へぇ〜そっか昔から仲良かったの?」
「まぁ…うん。向こうが引っ越しちゃって…その後会えてなかったけど先月病院で再会して…。」
「そっか。なんかすごい仲良さそうだから…ムカつく。」
「えっと…ただの同級生だよ!何でもない。」
「本当?そう思ってるのはなるちゃんだけじゃない?」
首筋をすーっとなぞると成瀬は体をこわばらせる。
「ひゃっ……」
「あいつはなるちゃんのこと狙ってると思うよ?男が気に入らない女の子家まで送ったりしないよ。」
「それは夜遅かったから……」
「そんなことなーい。ここ駅から歩いて1分だよ?それが心配?」
「ん……くすぐったいよ。」
「これ嫌?」
「別に…嫌じゃないけど……」
「ならする。」
俺の女だと印をつけてしまいたい欲求を抑えて、首元に軽く口づけする。成瀬はあまりの恥ずかしさに顔が真っ赤になっている。
「なるちゃん…かわいい…。」
「心臓が壊れそう……ちょっと離して……」
やりすぎたか……
もう一度成瀬の手を取って家の中に誘導する。
ソファーに座らせて優しく頭を撫でる。
「ごめんごめん…いきなりびっくりしたよね。何か飲む?」
「チャイティー飲みたい。」
「分かった。すぐ作るね。手洗っておいで。」
「はーい…」
逃げるようにして洗面台に行く成瀬を見届けて、樹はまた微笑む。
可愛すぎて…愛おしすぎて……
早く自分のものにしてしまいたい……
彼女は俺から近づいて欲しいと言った。だからこうやってもいいんじゃないか…?
本当は彼女の課題をもう少し解決して、心に余裕ができた時に正式に告白しようと思ってた。でもあんな男に付け入れられるよりかは…いっそ早く告白してしまおうか…。
「はい…チャイティーだよ。熱いから気をつけて。」
「わーい!いただきます!」
「こんな薄手で風邪ひくよ?もう来週には11月なんだから。ボタンもちゃんと上まで留めないと…。」
「樹先生過保護すぎ…笑」
「他の男に狙われたら嫌だとかじゃなくて、風邪ひきそうで心配っていう純粋な気遣いです。」
「嘘つけ!笑笑」
玄関での出来事で少しはだけだブラウスを樹が指でなぞる。
「分かってるなら…俺の前だけにして?」
「……っなんか今日どうしたの?イメージが全然違う。」
「男として意識して欲しくて。」
「えっ……」
「僕のこともっと男として見てほしいから。」
固まっている成瀬の唇にキスをする。
成瀬は最初は驚いたように体を硬直させていたが、様子を伺いながら何回かキスを繰り返すと徐々に樹を受け入れ始めた。
自然とディープキスになり、不慣れな成瀬を樹が優しくリードする。成瀬は呼吸の仕方が分からず苦しくなって、樹の肩に寄りかかる。
長いキスの間、2人は夢中でお互いを感じた。
これ以上は……ダメだ。俺が我慢できる自信がない。
成瀬はとろっとした表情でもうやめてしまうのか…と樹を見つめる。
体が熱い……
樹は思わず目を背ける。
しばらくの沈黙が2人の間に流れる。
「僕は本気でなるちゃんのことが好き。なるちゃんと律と柚と4人でこれからもずっと一緒にいたい。だから…僕の彼女になってくれませんか?」
「……!」
「すぐに返事してくれなくてもいい。しっかり考えて答えを聞かせてほしい。」
「わ…分かった……」
家に帰したくない…。ずっと横にいてくれたら……。
高まる思いを抑え、成瀬を帰宅させる。
