遠く、儚く。



次の日、樹は休みの日なので律と柚を連れて近くのROUND4に遊びに来ていた。成瀬は大事な案件があると午前中だけ休日出勤だ。

樹は、はしゃぎまくる双子のエネルギーに感嘆しながらも、30代に突入してもう若くないのだということを実感させられた。

もともとジム通いもしていたし体力には自信のある方だったが、これから6歳差の成瀬と付き合って、かつ双子の面倒を見ていくためにはもっと体力鍛えないとな……


昼過ぎには合流予定だった成瀬が仕事が長引いているということで、先に3人で昼食を食べることにした。双子の意見を反映して回転寿司に来た。

嬉しそうに寿司を頬張る2人を見て樹は微笑む。

こう見ると2人とも成瀬に目鼻立ちがよく似てる。



「こう見ると2人ともなるちゃんに似てるな。」
「昔よくそう言われてた!」
「へぇ〜そっか!昨日は成瀬ちゃんから聞いたけど、東京に来る前は愛媛にいたんだって?愛媛より東京が楽しい?」
「うーん、私は愛媛も好きだった!」
「そっかー田舎の方がのびのびしやすいしなー。」

「ねーちゃん樹先生には昔の話するんだ??意外〜」
「うんうん。昨日ちょっとだけ話してくれた。」
「そうなんだ。事件のことも?」
「全部じゃないけど…うん、ちょっとだけ。2人は記憶にないんだよね?」
「僕たち赤ちゃんだったから…。でもねーちゃんは僕たちが何も知らないと思ってるけど、実は知ってる。」
「えっ…そうなの?」
「うん…施設の人が話してるの聞いちゃって、その後自分たちで調べたりもした。」
「そっか……2人も辛かったよな。」

「僕たちは全然。覚えてもないし。でもねーちゃんは全部見ちゃったから…」
「…全部見たって?」
「ねーちゃんが第一発見者だよ。家が血だらけで、お父さんもお母さんも死んでて…隣の家に助けてくださいって走り込んだらしい。」
「………」



……なんてことだ。
トラウマの根源に触れられてもいなかったのか…

2人に話を聞いて、ネットで12年前の事件のことを検索すると色々記事が出てきた。

口論になった両親がお互いを包丁で刺して殺害。子ども3人は寝室で寝ていて無事。翌朝目を覚ました長女が発見し…近所の住人に助けを求めたことで事件が発覚……


「ねーちゃんは平気なふりしてるけど…多分思い出したくないんだと思う。愛媛にいた時の話するとすごく嫌な顔するし…」
「そっか…2人もたくさん心配したよね…?」
「それはそうと…最近樹先生夜にねーちゃんの部屋に行くでしょ?2人付き合ってるの??!」
「うーん…付き合ってはない。今はね。夜になるちゃんの部屋に行ってるのは治療のためだよ。僕もなるちゃんのトラウマのこと気づいてて、治療が必要だって思ってた。」
「そうなんだ……」


幼いなりに、たくさん姉の心配をしているんだろう。
それでも2人に何も語らず、この辛い過去をたった1人で背負って来たのだ時思うと言葉にならない。

13歳なんてまだまだ子どもだ。
何で事件後すぐにちゃんとした心理治療とケアをしなかったんだろう……
苛立ちが募る……