「私がずっと一人っ子だったから…弟か妹が欲しいってずっと言ってたんだ…。それで小6の時に律と柚ができたんだけど……」
「うんうん…。」
「それまではまぁ…普通の家庭だったと思う。お父さんは怒るとちょっと暴力的だったけど、怒らせなかったら普通に優しかったし。」
「そうだったんだ。律と柚が生まれてから何か変わった?」
「今思えば…産後うつだったんだと思う。お母さんとお父さんの喧嘩がものすごく酷くてさ…。笑 最初の方は必死に止めてたんだけど…こっちまでもの投げつけられるし…笑」
「そっか……」
「んで律柚が一歳半の頃、結局あーなった訳。仕方ないよねー。うつだったんだもん。」
「もちろんお父さんお母さんにも事情があったんだろうね。でも…大人は子どもを守るのが役割。それをしなかった二人には問題があった。」
「まぁ…そだね。この世にいない人恨んで何になる?だけど。」
成瀬は事件の直接的な話はしようとしない。
相当ショックな内容なのだろうというのは予測がつく。
まだまだ時間がかかるだろう…。
「昔から東京にいたの?」
「いや…愛媛にいた。」
「そうなんだ!いつこっちに来たの?」
「高校卒業してから。私も律たちも事件の後施設で育って…高校卒業した後に私が連れて施設を出てこっちに来た。」
「大学は?この前こっちで通ったって言ってたよね?」
「そう。学費出すお金がないのは分かってたからまぁ…勉強頑張ったよね。」
「そっか〜なるちゃん賢いもんなぁ……専攻は?」
「医学部です…先輩…笑」
「えぇ…??そうだったの?!」
「一応ちゃんと国家試験も受かってます…笑 でも在学中にもう就職して働いてたから初期研修も受けてないし、医者として働くことはもうないかな?」
「そうなんだ…。〇〇薬品だったっけ?」
「そうです。」
「優秀なんだな〜あそこに在学中に入社なんて…。」
〇〇薬品は日本トップの医薬品企業だ。
在学中に…ってことは相当逃したくない人材だったに違いない。
「学業と仕事どうやって両立してたの?律と柚の面倒を見るのも大変だっただろうに……」
「そこはもう気合で…笑 っていうのは嘘で、会社からもたくさん配慮してもらって、勤務時間もフレックスだったし、卒業するまではかなり優遇してもらってた。」
「そうだとしても…大変だったでしょ…。」
「おかげさまで眠れない体質だったから助かったよね、ある意味…笑笑」
何年もこうやって生きてきたんだろうな……
自分を犠牲にする生き方…。
成瀬は自分が兄弟が欲しいと言ったと言った。
もしかしたら自分のせいで両親が変わってしまったと思っているのかもしれない。
