遠く、儚く。



新見がちょうど割れた皿を全て片付け、床を拭いていた頃、双子が戻ってきた。


「お!着替えれたね!」
「「はい!」」
「「新見せんせー!今日せっかくだから一緒にママのお誕生日会しませんかーー?」」


えっ??と、新見は驚いた表情を見せつつも、双子の光り輝く視線に拒否できない。


「一応…お家の人に確認してからにしようか?とりあえず、このケーキはラップかけて冷蔵庫に入れておこう。生クリームも買いに行かなきゃいけないし。」


近所のスーパーに向かう道すがら、双子に新見が問いかける。


「そうだお二人さん、名前は何ていうの??」
「「りつです!」」「「ゆずです!」」
「そうかーー!2人は双子??」
「「そうですー!同じ11歳です!」」


11歳……ということは、大嶌さんが17や18で産んだとして今20代後半……ん?いやあの子はどう見ても20代前半……童顔なだけか?? 

いろんな考えが新見の頭の中を巡る。

買い物を済ませ、律と柚の好きなアイスクリームやお菓子をたっぷり買ってあげた新見は、すっかり2人に懐かれてしまった。


「それはそうと…りつくんもゆずちゃんも一度もマンションですれ違ったことなかったからママが1人で住んでるんだと思ってたよ〜笑」
「「ママ綺麗でしょ〜!若いし美人だし、学校の友達もみんなそう言ってる!」」
「そうだよなぁ…あんなお母さんだったら嬉しいよなぁ…僕でも毎日自慢してると思うよ!笑」


あの美貌で…あの体型で母親かぁ……と物思いにふける新見。自宅に戻ってから、新見は2人にハンドミキサーを貸してあげ、あっという間に生クリームが出来上がった。ワイワイとケーキの盛り付けを楽しむ二人を見守りながら、新見はテキパキと料理をする。二人がケーキしか準備できなかったと嘆いたからだ。

7時過ぎには成瀬が戻ってくると双子が話したため、それまでに新見は自宅に戻ろうとしていた。しかし予想外に、新見が自宅に戻る前に成瀬が焦った様子で自宅に戻ってきた。


「ただいまー」
「「おかえり〜〜!!」」
「「なるせねーーちゃんお誕生日おめでとうーーー」」


不意を突かれてしまった新見もどうすることもできず、とりあえず拍手をしながら成瀬に「おめでとう」と言った。


「二人ともありがとう〜!とっても嬉しいよ☺️ 新見先生まで…お騒がせしてしまってすみませんでした…。」
「いえいえ…二人が一生懸命準備してる姿見てたら自分も心が温かくなりました…こちらこそありがとうございます。」
「「ねえねえ!ねえちゃん!新見先生がお料理たくさん作ってくれたんだよ!!」」


双子が成瀬の手を取って、ダイニングへと誘導する。
そこにはサラダやスープ、グラタンなどの料理がずらりと並んでいた。

成瀬は驚いたような姿を見せつつも、嬉しそうにはにかんだ。そこへ双子が準備したケーキを持ってダイニングに入ってきた。

お世辞にも綺麗とは言えない飾り付け。
様々なお菓子がこれでもかと貼り付けてある。双子が大好きなお菓子と言って買ったのは実は成瀬の好物だった。ケーキの上には25のろうそく。

ケーキを受け取った成瀬の顔からまた笑みが溢れる。
「二人ともありがとう…!!とっっっても嬉しい!」そう言って、律と柚を力強く抱きしめる。