美風は途中の駅へ降りて、駅弁を3人分買って来た。


「僕の奢り。向井にやるつもりはなかったけど、僕は意地悪じゃないから。新田さん、食べて食べて。」

「僕別に要りませんけどねえ。まあ食えっていうなら食べますよ、ありがたく。」

「わあ」


 駅弁は炊き込みご飯と山菜の煮付けと鮭とだし巻き卵で、作りたてでほかほかとまだ温かかった。


 恋が、苦手な山菜を避けて炊き込みご飯ばかり食べていると、律が言った。



「あ、恋、山菜食べれないんですか?」

「……」

「あ、新田さん、苦手なものあった?。ごめんごめん。残して良いよ、キミが嫌いなら。」



 美風が言ったので恋はホッとした顔をした。
 律が急に声音を作った。

 

「恋、好き嫌いなんてしてないでちゃんと食べる、山菜も残さない。好き嫌いしてたら大きくなれないだろ、まったくもう。……上野さんは言いそうですよね。」

「あいつはね。上から言いそう。そういう奴だから。嫌いなもの食べろなんて、嫌われるに決まってるのに。ま、今日は居ないけど。居なくて良かったよ。ね?新田さん。」

「……」

「恋恋、あーんで食べさせてくれるなら僕がそれ食べますよ。」



 恋は箸で手つかずの山菜を律の弁当の端に置いた。