恋と律は、この間と同じ様に、海側のペットショップへ2人で遊びに来ていた。

 今日も二人はこの間と同じ様にキャットフードを買いに来たのだ。

 恋が好きな小魚のキャットフードは今日は売り切れていたので、恋は代わりにと魚介類のキャットフードを手に取った。
 律はまたいわしのキャットフードを手に取った。
 律はよく色々な味に挑戦していたが、一番気に入っているのはいわし味らしい。


「あやかし狐ってどれくらい居るか知ってますか?」


 子猫や子犬の値段の書かれたガラスのケージを後ろに律が聞いた。
 このペットショップでは血統書付きしか扱っていない様だった。



「三万人に1人。この地方ではもっと多いけど。僕たちはそのうちの貴重な1人なんですよ。なんだか誇れる気がしません?」

「貴重は貴重だけど、親戚にうじゃうじゃ居るよ」



 恋が言った。



「お母さん方のいとこに三つ子のあやかし狐が居る。あやかし狐より三つ子の方が珍しくない?」

「かもしれませんね。それはどういう運命の巡り合わせでそうなったんだか。でもそれにしたって僕らは貴重です。」


 
 律が言った。


「僕、あやかし狐はあやかし狐同士で結婚した方が良いと思うんですよ。うちの両親みたいに。」


 律が微笑んだ。


「両親とも幸せにやってます。あやかし同士だと深く理解し合えるし。たまにですけど2人で狐になってます。恋にも考えて欲しいな。あやかし狐との結婚。同じ一族は一族で結んだ方が絶対幸せになれると思うんですよ。ちなみに」


 律が笑顔で言葉を切った。


「僕が知り合ったあやかし狐の女の子の中で、恋が一番僕向きです。言いたいこと分かります?」


 恋が首を振ってきょとんとしていると、律はクスクス笑いながら、

 
「ま、いずれ」


 と言って、キャットフードをカゴに入れてレジへ向かった。
 恋は商品をカゴに入れずそのまま手で持って、律の背中の後ろに並んだ。