結局、恋は宗介に内緒で美風と紅葉狩りに行くことになってしまった。
約束の日、恋は鞄を持って、駅前の日時計の公園に立っていた。
辺りには匂いやかに秋の気配。
色とりどりな花が花壇に咲いて、美しい豊穣の季節を謳っている。
恋が美風を待っていると、後ろからぽん!と頭を叩かれた。
「恋!」
「あ、律」
「偶然ですね。どこ行くんですか?」
そう言ってから律はペロ、と舌を出した。
「なーんてね。調査済みです。今日は上野さんに内緒で樋山さんと遊びに行くんでしょう。浮気者。いけない子だなあ、恋は。」
「し、しーっ。律。」
「僕も行きますよ。だって、恋は、僕1人が誘ってもちっとも相手にしてくれないんだから。何でなんですか?。僕が年下だから?。メールだって僕にだけ返信くれないし。僕に酷いと思ってくださいよ。だから今日は、樋山さんがチャンスを作ってくれて大助かりです。」
「新田さん……あ」
間もなく美風がやって来た。
美風は恋達の居る日時計のベンチまで来て、律を見て嫌な顔をした。
「新田さん。ひょっとして向井の事、呼んだ?」
「呼んでないけど、今日は行きたいって」
「ご一緒しますよ。抜け駆けは駄目ですよ、樋山さん。あーあ、恋が、僕と2人のお誘いに答えてくれれば良いのに。僕には絶対駄目って言うから。何でなんですか?恋。僕だけおミソの子供扱い、僕怒ってますからね。……だから、仕方なく樋山さんを利用して遊ぶんです。」
「利用されたくない。向井は帰れよ。久しぶりの僕と新田さんのデートに、邪魔ったらない。今日は服装だって、せっかくデザイナーに頼んで、女の子に好感度の高いコーディネートを選んで貰って来たのに。それが台無しだ。」
「まあまあ洒落てますね」
律が関心なさそうに言った。
「お前に言われたくない!。新田さん、服装はどうでも良いけど、今日は僕新田さんだけのために時間作ったつもりだから。まったくなんで向井が邪魔に入るんだ。納得行かない。新田さん、今度から、向井にメールチェックさせないでよね。」
「メールチェックは基本です。恋が普段どういう事考えてるか知ってなきゃ嫌ですもん。まあ良いじゃないですか、僕が居たって。もっとも僕も樋山さん抜きのが良い。恋、どうします?」
「えっ」
「僕と行きます?。樋山さんと行きます?。紅葉狩り。」
「えっと私は……」
恋達は結局三人で公園に行くことになった。

