一方、その頃宗介は。


「なんで僕の行く方に狐のチビが来るんだ」

「恋が居そうだと思うところが、僕と上野さんで被るからでしょうね。」


 宗介と律は、水族館の入り口のお土産屋で恋を探していた。

 宗介と律の考えでは恋は魚にはあまり興味を持たないので、雑貨の小物を売るこのお土産屋に当たりをつけたのだ。


「どっか行けよ。僕が恋を見つけてやるんだから。」

「行きませんよ。僕の方が先に恋を見つけるんだから。」

「大体、年下のあやかし狐のくせに、ナマイキなんだよ。今日も来なくて良いのにノコノコ付いてきて。恋には僕が居るから、お前の入る余地なんてないのに。なんでそれを分からないんだよ。」

「上野さんこそ、年上、もうちょっと自覚した方が良いんじゃないですか。年上だから恋と僕が話すのを許してくれるとか、年上だから恋を僕に譲ってくれるとか、なんかあるでしょ。僕はあやかし狐ですもん、恋のそばから離れませんよ。今日だって恋のビデオ撮りだめして、後で見るんですもん。」

「あやかし狐だからって調子乗るな。恋を見るな恋に近づくな恋に話しかけるな。もう、樋山だけで充分なのに。年下のチビまで恋に懐いて、僕の立場がない。それと、あやかしの癖して敬語でぶりっ子すんな。ビデオは返せよ。まったく。」

「嫌に決まってるでしょ。恋とはツーカーのあやかし同士の中ですもん。年下男子と年上女子は黄金バランスだし、恋は上野さんじゃなくて僕を取りますよ。樋山さんが居るのがちょっと邪魔だけど……。上野さんなんて、幼馴染ってブランド取ったら、恋にとって何も残らないじゃないですか。それと、敬語は僕のキャラです。可愛い愛らしい年上女子受けするキャラ立ちでしょ。言っとくけど真似させませんからね。」


 言い合いをしながら、2人はお土産屋を諦めて、また元来た道を戻った。