高等部の校舎から歩いてきた新聞部の伊鞠は、昇降口を通って、早足で2年の教室へ向かった。
 伊鞠には今日は用事があった。

 2−1の教室で宗介の姿を見つけると、伊鞠は足を止めた。

 
「上野くん」

「あ」


 宗介は迷惑そうな顔をした。


「加納先輩。記事だったら協力しませんよ。ネタなら他で見つけてください。学校で写真撮られるのもううんざり。黒王子って一体何のことですか。何が黒で何が王子なんですか。迷惑なんですよ。」

「そうじゃなくて、今日は上野くんにちょっと提案なんだけど。」

「?」

「日曜日、記事のメイン達を慰労にケーキバイキングに連れて行こうと思って。」

「ケーキ?」

「私の奢り。お洒落なホテルのお洒落なレストランで。ツテがあるのよ。ケーキ食べ放題、ドリンクも飲み放題。絶対美味しいわよ。行きたくない?」


 怪訝そうな宗介に、伊鞠はレストランのあるホテルの場所を説明した。