木彫りの甘味処の看板。
恋と理央と明日香は、駅の裏手のこの店でテーブルに食べ物が来るのを待っていた。
店のメインは甘いもの。
売り物はおいしそうなソフトクリームやパンケーキやパフェで、お客さんは女性が多い。
理央が見つけてきたこの店では、現在割引フェアをやっていた。
注文した料理がめいめいに届いて、理央が言った。
「この抹茶パフェ最高!蜜豆も乗ってるし、何より宇治抹茶とバニラの風味が。インスタ映えもするし、写真撮って良かった。恋も明日香も、一口食べてみなよ。」
「私はあんみつ。」
明日香が言った。
「下手なパフェより和モノのが好きなんだ。この甘さ。前来た時はみたらしを頼んだんだけど、そっちもおいしかったよ。」
「今日はチョコレートパフェにしたんだ。」
恋が言った。
「キャラメルがあったらキャラメルにするんだけど。チョコパフェもおいしいよ。」
「良いよね、女子会に甘いもの。」
「私高校生になったら、絶対可愛いこの店でバイトしたい。ねえ恋も理央もそうしない?」
「良いね。」
3人は甘味を頬張りながら頷きあった。
店員さんが、チョコレートが掛かったバニラアイスと苺とフルーツの載ったパンケーキを持ってテーブルの横を通り過ぎていく。
「あ、そうそう」
理央が言いながら脇に置いていた鞄を開けた。
「今日は恋にプレゼントを持ってきたんだ。」
「プレゼント?」
「じゃーん!白王子と黒王子の謹製ブロマイド!」
理央が取り出したのは、ラミネート加工されて下敷きの様になった宗介と美風の写真だった。
2枚ともキラキラ光る銀色のゴシックな模様の枠が加工されている。
宗介は真正面からで、美風は横顔だった。
アイドル顔負けのルックスの2人は、売り物にされてしまっているのをどう思うだろう。
「校舎裏の販売会、暇だったから覗きに行ってきたんだ。」
理央が言った。
「1枚500円だったよ。私が行った時は、10人位の女子が集まってた。あの子達、恋の事羨ましがるだろうね。」
「さあ……」
「全部加納先輩と石巻先輩が自分で売ってた。加納先輩が言うには、黒白両王子の握手会を開催したかったんだけど、上野くんと樋山くんが大反対して取りやめになったんだって。2人のサイン会も絶対駄目って断られたんだって。面白いからやれば良いのにね。」
「それは……」
「まあ反対するのも無理ないよ。上野くんも樋山くんも、アイドルみたいってだけで一般人だし。黒白王子の黒王子が彼で、白王子が準彼かあ。恋そうやって騒がれる2人に取り合われてるんだから凄いよね。少し自覚持った方が良いよ。」
「……」
「いつもとはいえ良いなあ三角関係。あー恋見てたら私も彼氏欲しくなって来た。誰か告白してくれないかなあ。」
「とか言って本当に告白されたら面倒なんでしょ?。理央は」
「あ、分かる?」
きゃいきゃい言う2人の話を聞きながら、恋はブロマイドを鞄にしまった。


