学校に行くと美風はもう席に付いていた。
 恋が鞄を置いて美風の斜め後ろの自分の席に付くと、美風はすぐに振り返って声をかけた。


「新田さん。」

「樋山くん、おはよう」

「おはよう。今日も暑いね。風はあるけど。あのさ、」


 美風が言葉を切った。


「一緒に花火大会に行かない?。海側の。」

「えっ」

「前から誘おうと思ってたんだけど、中々言うチャンスがなくて。やっと言えた。ほら、キミはいつも上野と居るでしょう?。だから。」

「ええっと……」


 恋が言い淀んで居ると後ろから理央が来て背中を叩いた。


「恋、おはよ!。樋山くんも。」

「おはよ」

「ねえ恋、いきなり相談なんだけど、海側の花火大会、一緒に行ってくれない?」

「えっ」

「奇遇。今その話してたところ。なんなら駒井も一緒に行こうよ。花火大会。」

「えっそうだったの?。良いね、恋、樋山くん、一緒に行こう。」

「うーん……宗介が……」



 困った顔をした恋は、宗介に誰も誘うなと言われた事を2人に遠慮がちに話した。

 美風は鼻を鳴らした。


「そんなの。新田さんを上野に独占させるわけにはいかない。今だって、彼氏面されて凄く不愉快なんだ。なんであいつなの?。……祭りは絶対一緒に行って貰う。良いでしょ?新田さん。」

「私恋が一緒に行ってくれるって、もうお母さんに話しちゃった。多分上野くんと樋山くんも一緒だろうなとは思ってたけど。」

「新田さんと僕の2人じゃないなら、みんなで行った方が良い。やっぱりみんなで行った方が楽しいよ。上野もどうせ来るだろうし。」

「そうだよ恋。あっそうだ、私律くんも誘ってあげるよ。それで四角関係、楽しむと良いよ。」

「……」

「せっかくだから浴衣を着ていこうか迷ってるんだ。ねえ、みんなで浴衣着て洒落込まない?。それで写真撮ろうよ。どう?。」

「それも良いね。たまには雰囲気変えないとね。新田さんも着てくるんでしょう?。みんながそうするなら、僕も着ていこうっと。前に買っておいた奴があるんだ。」



 どうやらみんなで行くことになりそうな花火大会に、恋は小さくため息をついた。