「怖がられるかと思いました。」

 
 狐から人の姿に戻った2人は、公園のベンチに座って話をしていた。

 
「だって、あやかし狐だって分かると、大抵みんな逃げるし、避けるし。っていうか、人の姿で声をかけられたら驚きますもんね。いきなりすみません。」

「びっくりした。あやかし狐って滅多に居ないから。」

「僕もそう思います。同胞が居てとっても嬉しいです。お近づきになれて。あの、名前を聞いてもいいですか?」

「新田恋」

「僕は向井律。」


 年を聞くと律は恋のひとつ下だった。
 律は、いわゆるあやかしクオリティの整った顔立ちに、狐色にオレンジがかった茶色い髪をしている。


「あやかし狐ってどう思います?」


 律が聞いた。

 
「僕自分が狐なの気に入ってます。人に変身する所を見られちゃいけないのがちょっと面倒だけど、外走るのに便利で。足超速いし。カン働くし。別にそんなに気にはならないけどあやかしだと容姿が整うし。それはそれで有利な事ですよね。……他にもあやかしだと良い所色々あって。良いですよね、狐。特別で。」

「ご両親もあやかし狐なの?」

「父方も母方も狐です。母方は純粋なあやかし狐の血統です。あやかし一家なんですよ。」


 それからちょっと言い淀んで。

 
「不思議です、前にも恋に会った事がある様な気がする。どこで会ったかは分からないのに。変ですよね。」

「えっ」


 恋は、私もそう思ってた、とびっくりしながら正直に言った。


 
「あの、僕本当に言ってますよ?。こういう運命的な感覚の事で嘘つかれたくない。そんな感じしなかったらしなかったで全然良いんだし。無理にそうやって言われたくない。僕が直感的に思っただけなんだから。」

「私だって。本当だよ。驚いてる。」

 

 律は疑うような顔をしていたが、やがて表情を緩めると言った。
 
 
「不思議な事もあるんですね。……運命感じます。仲良くしてください。」



 恋と律はすっかり意気投合して、それから遊ぶ約束をして分かれた。