ハートの模様のついた、白い木の勉強机。
 水色のベッドの出窓には、いつか宗介と美風にゲーセンで取って貰った狐のキーホルダーが2つちょこんと乗せられている。

 恋と宗介は、久しぶりに恋の部屋へ来ていた。
 いつもは恋の方が宗介の家に行くのを、今日はちょっと用事があったのだ。 
 恋は今日、宗介に昔撮った写真を渡すつもりだった。
 ちょっと前に恋がクローゼットのアルバムを整理していると、幼なじみの宗介の写真が出るわ出るわ、一袋に入りきらない程。
 そんな状態だったので、恋は宗介に要らない写真を引き取って貰うつもりだったのである。


「お前が要らないものは僕だって要らない。」


 恋の勉強机の椅子に腰掛けて、仏頂面で宗介が言った。


 
「大方は邪魔な物を押し付けて、自分の部屋だけ片付けようとしてるんだね。まあいいけど。」

「邪魔っていうか、置く場所なくて。」

 

 恋が言った。



「宗介の家は私の家より広いから、困らないだろうと思って。」

「まあ良いけどって言った。こんなに撮って、おばさんはどうする気だったんだろ。ダンボール2箱分だろ。いつ撮ったんだか。常にカメラ持ってたとしか思えない。写真って捨てない限り無くなんないんだから、CDにして纏めておけば良いのに。」

「CDって?」

「呆れた。音楽だけじゃなくて写真も入るんだよ。そんな事も知らずに生きてたの?」

「ディスクって言われてたら分かったけど、言い方が。」

「ふーん。何でも良いけど、分かった。その袋を貰って行けば良いわけね。」



 宗介は茶色い紙袋に入った写真を受け取って、適当に何枚か出して眺めた。

 一緒に幼稚舎の頃の写真を眺めながら、恋はあれ、と言った。


「どうかした?」


 宗介が聞いた。

 

「その写真、幼稚舎の友達居るのに狐で映ってる。」

「あ、ほんと」



 宗介は怒り笑いして恋を見た。


「昔っからお前は、隙を見せれば狐になろうとして。人が見たらどう思うか考えろよ。お前があやかしって事は、人に絶対に知られちゃいけない秘密なんだから。」

「案外バレたらアイドルになったりして。」

「呑気なこと言ってんじゃないの。ほんとにあやかしなんだから。こっちは心配ばっかして。迷惑。ほんと。この写真、今と全然変わらない。」



 恋は写真を眺めながら、当時の事を思い出していた。