ロビーには律が先について待っていた。

 律は建物の中庭を眺めながら、ペットボトルのお茶を飲んでいた。


「恋!」

 
 律が気づいてこっちに向かって歩いてきた。
 律は今日はお洒落な格好をしていた。


「はじめまして。」

 
 律が宗介と美風に言った。

 それからちょっと考え顔ですぐ聞いた。


  
「前にどっかで会いませんでしたっけ?」

「僕らも。それがどこかって話をこの間した。顔は覚えてた通りだ。多分会ったことあるよな?」

「僕はキミの下の名前は覚えてた。絶対1回会ってるはずだよ。どこで会ったかは思い出せないけど。不思議だよな。こういう事ってあるんだ。」

「ふーん。」

 

 律は興味なさそうに2人をジロジロ見た。

 それから突然、

 
「上野さん……って、恋とどういう関係ですか。」

 
 と笑顔を作って聞いた。


「恋人。見ての通り。」


 宗介が応えると、目を瞬いて、


「へえ。全然そんな感じしなかった。……先に言うと僕恋狙いなんで。上野さんちょっと邪魔だなあ。要らない。恋、年下、嫌いですか?」

 
 と恋の方を振り返って聞いた。


 宗介がむっとした顔で黙ると、律は今度は美風に、

 
「樋山さんは?」

 
 とまた笑顔で聞いた。



「僕も新田さん狙い。悪いけどあげないよ、狐くん。」

「ああ、邪魔者ですね、二人とも。僕の障害物。今日は来ないで欲しかったなあ。残念。なんで来たんですか?」



 宗介が嫌な笑い顔をした。

 
「喧嘩売ってんの?。なんなら買うよ。何?いきなり態度悪いんだよ。」


 美風はクスリとブラックな笑みを浮かべて、

 
「新田さん狙いの年下かあ。狐の坊やねえ。チビスケ年上には生意気言わないほうが英断だよ。」

 
 と言った。