朝、学校に行く時宗介が先へ行ったと聞いて、恋はまずちょっとショックを受けた。

 昨日の事は誰も知らないはずだったが、宗介がそうなのには、いつも何かしら理由がある。

 恋は、行きたくないと思いながらも、制服のリボンを結んで、鞄を持って家を出て学校に向かった。






 恋が教室に着くと、宗介はもう着いていた。

 宗介は教室に入って来た恋を見てちょっと首を傾げると、開口一番こう聞いた。



「居た居た恋。まさかとは思うけど、昨日樋山の家なんかに行ったりしてないだろうな?」

「えっ……」



 恋が硬直して思わず美風の方を見ると、聞いていた美風はちょっと覗き込む様にして、いきなり聞いた。



「新田さん、僕と付き合ってくれる気になった?」

「ならないよ」



 恋は困り顔で宗介に聞こえる様に言った。



「どうしてもならない?」

「ならないったら」



 宗介はそれを無視していたが、ふと、美風はニコっと笑った。



「あ、そう。それなら。昨日は楽しかったね、新田さん。」

「!」



 澄まし顔の美風に、宗介の表情が変わった。



「昨日って?」



 宗介は恋を睨んでいたが、ふいに、目を逸らした。