…もう卒業まで学校には来ない。

あと数日だし。別に弘人にだって卒業したら会う事ないし。


でも、

どうして切なくなるの?


校門を出てすぐ「亜希ー」と叫ぶ声が背後から聞こえた。

進ませていた足はその声でピタっと止まり、すぐに後ろを振り返った。


急いで来たのか少し離れた所から、鞄とマフラーを抱えてこっちに走ってくる絵梨佳の姿が見えた。


ハァ…ハァ…と息を切らしながら走ってきてあたしの所まで辿り着くと絵梨佳は両膝に手を置き呼吸を整える。

手を置いた拍子に持っていたマフラーが地面に落ち、あたしは中腰でマフラーを拾い絵梨佳に差し出した。


「ありがと…」

そう言って絵梨佳はあたしの手からマフラーを取り首に巻きつけた。