しばらく経ってから、あたしは頬に伝った涙を親指で拭き取り教室に向かった。

ガラッとドアを開けて教室に足を踏み入れると「ちょっとー」と絵梨佳の甲高い声が飛んできた。

すぐに絵梨佳は超ご機嫌の笑みを見せてあたしの前まできたと思ったら、一瞬にして絵梨佳の笑みは崩れた。


「えっ、どうしたの?」


あたしの顔を覗き込み、絵梨佳は呆然と立ち尽くす。

そんな絵梨佳に何度か首を振って足を進ませ、ポツンと置かれている自分の鞄を手に取りあたしはドアに向かって歩く。


「ちょっ、亜希!」

咄嗟に掴まれた腕を見たあたしは、そのまま視線を絵梨佳に向ける。


「…亜希?」

「ごめん。今日は帰る」

掴まれていた絵梨佳の腕を反対側の手で離し、あたしは教室を出て階段を駆け下りた。