廊下に派手っぽい男は居るけれど、あの男でもない。
…名前だけでも聞けば良かった。
「そのうち会うか…」
そう、小さく呟いたあと「誰とそのうち会うの?」と男の声が耳に飛び込んできた。
思わず後ろを振り向くと、茶金の髪に着崩した制服。
手にもっている紙パックのお茶のストローをくわえたまま口元の端を上げた男。
まさしくこの男だ。
「あっ…」
その男の隣には女がベッタリとくっついていて、あたしと男を互いに見る。
「ねぇ、弘人だれ?」
女の甘ったるい声を耳にしたあたしは一瞬にして気分が悪くなる。
「ねぇ、弘人とどう言う関係?」
女は男の顔を覗き込んだ瞬間、その男はうっすら笑い口元を動かした。
「秘密」



