(……は?)
それは決して怒りなんかじゃないし、さっきまでの混乱ですらない。
ほんの数秒前まで頭を占めていた“疑い”とか“違和感”とか、そんなもの全部どうでもよくなっていた。
ただひとつだけ、胸の奥底から制御不能なほど溢れてくる感情だけが、やけに鮮明に形を成していく。
それは男としての独占欲よりも、総長としての支配欲よりも。
もっともっと深くて、甘くて、痛いほどに重い、未知の感情だった。
──『愛おしい』。
それ以外の言葉が、今の俺にはどうしても見つからない。
この胸を狂わせる感情の正体が分からないまま、ただ確かに、俺の心の中心に深く深く落ちてきていた。
「蓮、さん……っ……」
微かに震える声で、その愛らしい唇が、確かに俺の名前を形にする。
……ただそれだけのことなのに、喉の奥が焼けるみたいに熱くなっていく。
その濡れた瞳に今まっすぐ映っているのが、他でもない“俺”だという事実だけで、立っていられないほど激しく心臓が跳ねた。
(……そんな無防備な顔、すんな。……そんな声で、俺の名前を呼ぶな)
……お願いだから、俺以外の男には、絶対にそんな姿を見せるな。



