「コールドスリープって知ってる?」
由良は、静かにその言葉を落とした。
───"コールドスリープ"。
………聞いたことがある。
「人工冬眠、の………?」
恐る恐る尋ねた私に、由良はコクッと頷いた。
「そう。人間の体温を低く保って、長期間の生存・老化防止を図る技術」
「え、でもそれって………」
「まだ、完全と言える研究結果は出てない」
由良は遠くを見て、淡々と告げた。
「けど───」
それが、由良がまだGoshawkにいて抜け出せないのとなんの関係が………
「───由宇がね、生きてたんだよ」
由良の声が、鼓膜を震わせる。
意味を理解した瞬間、心臓がドクンと大きく跳ねて、そのまま冷たく凍りついた。
嘘、でしょ………?
なんで。どうして。
あの時、あの砂浜で。
由宇は確かに死んだはず、
なのに───
「信じられないよね。でも、俺、見たんだ」
ドクドクと心臓がイヤな音を立て、全身から血の気がサアッと引いた。
「真っ白な顔で機械に入れられている由宇を───。」
───ああ、もうダメだ。
キャパシティを超えた衝撃に、頭の芯がじわりと熱くなる。
問い詰める言葉も、否定する気力も。
すべてがその一言で消し飛ばされてしまった。
ぼたぼたと、溢れ続ける大粒の涙が床にシミを作っていく。
由良の顔が見えなくなるくらい視界が涙で遮られても、耳に残る彼の言葉だけは、冷酷なほどに鮮明だった───。
「人質に、取られたんだよ。……その機械の鍵、九条しか持ってないから。」
ふいに、私を抱きしめる腕に力が入った。
「由宇を助けたければ、一生俺の元で働けって。じゃないと、由宇は………」
───限界、だった。

