君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~

─── ♠ ───





「……そっか。由衣は今、crowにいるんだね」


カラン、とグラスに入った氷が音を立てた。


「うん。……由良は、Goshawkだよね?」

「そう。じゃあ俺たち、敵同士だ」


ハハ、とグラスを傾けながら乾いた笑みを浮かべた由良。


───"敵"


「一応、そういうことになるんだね」

「こんだけ油断してるし、本当に敵同士だったら、お互いにもう死んでるよ」


「そう、だね………」









静まり返った部屋に、チクタクと時計の針の音だけが響く。


「由良は───」


私が横を見ると、ん?と首を傾げる由良。

───昔から何ひとつ変わってないその仕草に、胸がキュッと締め付けられた。




「………なんで、今もGoshawkにいるの?」


ずっと、考えてた。
あの日、まだ由良がGoshawkに縛り付けられていると分かったときから。


由良は、強い。
それは双子として、幼なじみとして、仲間として────。

一番近くから由良のことを見ていた私が一番わかっている。



────でも、だからこそ。
そんな由良でも敵わなかった"何か"があったんじゃないかって。



「そんなに九条が手強かったの?」

「いや、隙だらけだった。あんなヤツ、やろうと思えばいつでもヤれる」


少しだけトーンが下がった声に、微かに感じるピリピリとした殺気。

グッと、由良が机の下で拳を握りしめた。



「じゃあ、なん───」

「でも、」


何かを言いかけた由良が、言葉を切った。

………そのただ事じゃない雰囲気に、背中にヒヤリとした汗がつたう。







「………由衣は、聞きたい?」


しばらくの間黙り込んでいた由良が、ふいに口を開いた。

一見すると、双子の私でも何を考えているのかわからないような真剣な表情。




「もちろん」


私たちは二人(五人)でひとつだから。
私だけが知らないなんて……あり得ない。

すぐさま返事をした私に、由良はなんとも言えない複雑そうな顔を向けた。




「もう、遅いかもしれないけど。───これを聞いたら、もう、本当に引き返せなくなるんだよ」




────それは、私たちを闇へと引き摺り込む、崩壊の合図────