君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



男はケラケラ笑いながら、由良の胸元を長い指で指差した。


「へぇ〜、そういうの付けるんだ」

「……うるさい」

「え、なに照れてんの?」

「照れてない」


迷いがない即答。

けれど、その耳はほんのり赤く色づいていた。



「やば、かわい〜。由宇くんに見せたら倒れるんじゃない?」

「だからやめてって……」


フイッと横を向きつつも、俺と二人きりの時より少しだけ空気が柔らかい。

………なんでだよ。


なんで、俺よりもその男の方が────


「ほんと、見せてあげられたら、よかったのに」

男が、一瞬だけトーンを落とした。


ゆるくもてあそんでいる長い金髪が、顔に影をつくった。


「もう、遅いよ………」

それにつられるように、ぽつりと小さな声でつぶやいた由良。



────由宇。

さっきから会話に出てくるその名前。



それってたしか…………


『殺されたんです』



以前、由良がぽつりと漏らした言葉が脳裏によみがえる。

────胸の奥が、嫌な音を立てた。






「……………由良」


俺が、小さく震えている由良の肩に手を伸ばしたその時。


「そうだ、俺もうすぐ休憩なんだよね」

男がふと思い出したように「あ」と声を上げた。


………待て。
その流れは…………。

嫌な予感がした。



「だからさ〜」


男は悪びれもなく、ニコッと笑う。


「ちょっと一緒に回ろうよ」

「……は?」

思わず低い声が漏れる。

………けれど。
男はまるでそんなこと気にした様子もなく、由良の方を見た。



「久しぶりだし。積もる話もあるじゃん?」

「いや、でも……」


由良が困ったとうに視線を揺らす。
その反応がまた気に入らない。



今は、俺との時間だろ。
そんなの、迷う必要もないのに。


──なのに。

由良は、完全には拒絶しない。


(さっさと、断れよ────)