君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



「………あ、ごめんなさい。ピアスはちょっと………」


小さく、消え入りそうな声で、申し訳なさそうに由良がつぶやいた。



え───と、一瞬思考が止まる。


断られるなんて、これっぽっちも想像していなかった。

何の根拠もないのに、きっと喜んで受け取ってくれる。……勝手に、そう思い込んでいた。



「…………では、こちらはいかがでしょうか」


凍りつきかけた空気を和らげるように、店員が柔らかく口を挟む。


「先ほどのピアスと同じデザインのネックレスです。恋人や友人など、お揃いで身につけられる方も、多いですよ」


視線を少し横へ向ける。


そこには、さっき俺が選んだピアスと同じ三日月を模した、小ぶりなシルバーネックレスが並んでいた。


月の下には、小さな黒石。
静かな光を宿したそれは、どこか由良の雰囲気によく似ている気がした。



…………確かに、これなら。

ちらりと由良を見ると、彼女は目に見えてホッとしたように息を吐いていた。


「あ、これなら………」


そう呟いて、じっとネックレスを見つめる。

そのどこか嬉しそうな横顔を見て、胸の奥が少しだけ軽くなった。
…………なんだ、そんな顔するなら最初からそう言えよ。



「じゃあ、これで」


俺がそう告げると、店員は「かしこまりました。少しお待ちください」と笑顔を浮かべ、慌ただしく店の奥へ消えていく。

──その瞬間だった。


「れ、蓮さん、ダメです。こんな高価なもの……」


ハッとしたように、由良がこちらを振り返る。


慌てた声音。

遠慮しているというより、“受け取ってはいけない”とどこか自分に言い聞かせているみたいな顔だった。



「……俺が、お前にプレゼントしたいんだ」


プレゼント。
自分の口からそんな単語が出てきたことに、我ながら驚く。


けれど、一度口にしてしまえば、不思議としっくりくる。



………形に、残したかった。

今日この時間を。
今、俺の隣にいる由良を。


目に見えるものにして、隣に……目につく場所に、置いておきたかった。


……たとえ、この先何があったとしても。