君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~


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『駅前の広場に、九時』


約束の三十分前………つまり八時半に、俺はひとりで近くの花壇に腰かけていた。

周りは楽しげなカップルやグループで賑わう中、俺だけがポツンと浮いている。


………まあ、そりゃあそうか。
気合が入りすぎて、約束の三十分も前に着いちまったんだ。


それにしても、アイツ、ちゃんと来るのかな。
ドタキャンしたりしねぇかな……と、ひとりで不安になり、虚しくなっていたその時だった。




ザワッと、辺りが急に騒がしくなった。


なんだ、喧嘩か? それとも芸能人でもいるのか?
そう思って、人ごみの方へ首を伸ばすと………

その中心から颯爽と現れた、ある人物とパチッと視線が交わった。


思わず二度見するほどの、絶世の美女。

腰まで届くゆるくカールがかった茶色の髪に、吸い込まれそうなほど深い瞳。

通り過ぎる誰もが足を止め、溜息を漏らすほどの圧倒的な存在感。


……その彼女は、俺を視界に入れた途端、あからさまに「はあ」と深いため息をついて、迷いのない足取りでこっちに向かって歩き出した。



「は??」


イヤ、ちょっと待て。
俺は、こんな美少女の知り合いなんかいねぇぞ………?

ナンパの代行か? いや、宗教の勧誘か?

俺が内心でパニックになりながら慌てているうちにも、美少女は着々と近づいてきて──









ついに俺の目の前で止まると、眉をひそめて不機嫌そうに口を開いた。


「おはようございます、蓮さん。」


………嘘、だろ。

耳に馴染んだ、少し低めで凛としたそのトーン。

男装という仮面を脱ぎ捨て、柔らかな服に身を包んだその姿は、俺の想像を遥かに超えて、残酷なほどに綺麗だった。


目の前に立っているのが、あの”由良”だと理解した瞬間、俺の心臓は今日一番の轟音を立てて跳ね上がった。