君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



「れ、蓮さ……………」


消え入りそうな声で、俺の名前を呼ぶ。
”男”のふりをしていた時よりもずっと心許ない、震える唇。


俺の腕の中で硬直しているその小さな身体が、今はただ愛おしくて、壊してしまいそうなほど脆く感じられた。



「なんだ?」

「お願いですから、このことは────」

「別に、アイツらには言わない」


食い気味に告げると、由良がホッと息を吐いたのがわかった。


……言えるわけねぇだろ。

バラして、李兎や他のアイツらまでが、コイツのことを”女”として見始めたらたまったもんじゃねぇ。

………由良の秘密を知るのは、俺だけでいい。
この柔らかな腰に触れるのも、正体を隠して怯える顔を見るのも、俺だけの特権だ。



実際にコイツ、だいぶ美形だったしな。
……いや、美形なんて言葉じゃ足りねぇ。


まだ男だと思っていたあの時も、ふとした横顔や瞳の輝きに、無意識に見惚れちまってたんだ。

………それが”女”だと分かった今、俺の理性がどれほどギリギリの場所に立たされているか、お前は分かってねぇだろ。



「………ごめんなさい。私、決して蓮さんたちを騙してあざ笑っていたわけじゃないんです。……詳しいことは今はまだ言えないんですけど、これだけは信じてください」


由良は、俯いていた顔をゆっくりと上げた。

その瞳には、さっきまでの動揺を押し殺したような、静かで強い覚悟が宿っている。


「私」──男装の仮面を脱ぎ捨てて、初めて口にした一人称。
その響きが、心臓の奥深くまで突き刺さる。


”私は、蓮さんたちの味方です”



まっすぐに見つめてくる、偽りのない眼差し。
お前が何を背負って、どんな闇の中にいるのか、俺にはまだ分からない。


………けれど、この瞳だけは信じられる。
そう、直感が告げていた。