「由良、お前………思った以上にアイツに気に入られてるんだな」
シン、と静まり返った部屋。
壁に背を預けていた陽人がぽつりと呟いたその声が、やけに響いた。
蓮さんが出ていった後の重い余韻を、その一言が塗り替えていく。
「────え?」
気に入られてる………?
私、が………?
まさか………。
彼はただ、新入りの教育に熱心なだけか、あるいは姫である桃華との仲を疑って監視したいだけだと思っていたのに。
「ええ、確かにそうですね。………出会ってからもう十年の付き合いになりますが、蓮のあんな真剣な表情ははじめて見ました。」
李兎が眼鏡のブリッジを押し上げながら、淡々と、けれど確信を持って告げる。
「そーそー。アイツ、ツンデレだからさ、態度は悪いけど……それだけ仲間思いなんだよね」
ソファの背にだらしなく腕を回した裕太が、ひょいと首を傾げて同意した。
「由良、君は……蓮の、お気に入りなんだよ」
"出会って間もない君に、僕たちの知らない蓮を簡単に知られて、ちょっと妬いちゃうなあ"
そう続けながら、困ったように眉を八の字にして笑う大晴。
───その言葉に含まれた純粋な”親愛”が、私の胸をチクリと刺した。



