「どっ、どうして………」
震える声で、由良が──彼女が問いかける。
自分の築き上げてきた完璧なはずの仮面が、どこで、どの瞬間から剥がれていたのか。
その正体を知りたくて堪らないといった、怯えと困惑が混ざり合った瞳。
「お前、ひっかかっただろ」
「えっ?」
「さっきの“彼氏”の話だ」
ゆっくりと言葉を落とす。
「お前、“彼氏”って単語そのものじゃなくて、“関係”のほうを否定しただろ」
空気が、わずかに揺れた。
「普通、そこ引っかかるとこ逆なんだよ」
男なら、まず言葉に違和感が出る。
でもお前は違った。
言葉じゃなくて、“状況”を否定した。
それが、ずっと引っかかってた。
「それに」
少しだけ間を置く。
「お前、“彼氏いたことないの?”って聞いた時、“いなかったわけじゃない”って言った」
その瞬間、由良の顔がほんのわずかに強ばる。
「……普通、男の恋人って“彼女”だろ」
――静かに落としたその一言で。
空気が止まった。
「っ……」
血の気が引いていくのが、はっきり分かる。
───ああ、ここだ。
崩れた音が、確かにした。
言葉の綻び。
無意識のズレ。
全部が、ひとつに繋がっていく。
(………最初からだったんだな)
触れた時の柔らかさ。
細すぎる体。
ふとした瞬間の、どうしようもなく“女”にしか見えない仕草。
───全部が今、一本の線になる。
「────なあ、」
腰を引き寄せる腕に、さらに力を込める。
────そして。
「……隠し通せると思ってたのか?」
耳元で囁く俺の声は、自分でも驚くほど低く、甘く、そして容赦なく響いた。


