「………いいなぁ。僕も見てみたいです」
私はわざとらしく目を輝かせて、蓮さんの瞳をジッと見つめた。
(さて、ここで彼がどう動くか………。)
すると、少し視線を落として顎に手を当て、うーんと低く唸った蓮さん。
「あぶねぇから、桃華は連れていってやれねぇけど…………」
彼の口から漏れる、申し訳まじりの呟き。
(……なんだ、姫は参加しないのか。
じゃあ私も、今回はお留守番かな。)
───そう安心したのも束の間、蓮さんは名案を思いついたように顔をパッと輝かせ、私の肩をポンと叩いた。
「………由良、お前は来い」
「………………えっ?」
予想もしていなかったセリフに、思わずなんともマヌケな声が漏れた。
「な、なんでですか………?」
私は目を丸くして、思わず一歩後ろに下がる。
蓮さんは少し得意げに鼻を鳴らすと、ソファの背もたれにどっかと体重を預けた。
「………お前に、暴走族ってもんを見せてやろうと思ってな。………ほらお前、前に暴走族に憧れてるって言ってただろ?」
「へっ、あ、まあ……言い、ましたけど……」
私は愛想笑いを浮かべながら、あいまいに頷くしかなかった。
潜入用の嘘を律儀に覚えているなんて。
……意外とマメというか、お節介というか。
────そして、蓮さんは真剣な目つきに変わると、胸を張って力強く頷いた。
「ならいいだろ。絶対にお前を危険な目にはあわせねぇから。」
「え、で、でも………」
彼女が参加しないなら、私もあんまり無駄に動きたくないんだけど……。
外に出ればそれだけ素性が割れるリスクも増えるし………。
蓮さんは私の沈黙を「遠慮」だと勘違いしたのか、よし、と区切りをつけるように膝を叩いて立ち上がった。
「…………これは総長命令だ。いいか、お前、明後日は絶対来いよ」
それだけ言い残すと、彼はソファから立ち上がり、私の反論を許さないまま部屋を出て行ってしまった。
「…………」
命令、ですか。
そんなこと言われたら、私は絶対に逆らわない………と、でも貴方は思ってるんですか?
もしそうだとしたら………貴方はまだまだ甘いですよ、"レンさん"。
私はあなたの部下じゃない。
ましてや、あなたの機嫌を取るために存在しているわけでもないんだから……。
当日は………予定が入った、とか適当な理由を付けてバックれよう。
そろそろ、組織に報告しに行かなきゃいけない時期でもあるし。



