君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



「さっきはごめんネー。まさか、あのタイミングで起き上がってくるとは思ってなくてさぁ」


悪びれる様子もなく、赤くなった自分の額をさすりながらヘラっと笑った……裕太、さん。


「…………」


(…………ゆるい。)



見た目はかなり尖っているのに、中身は驚くほど憎めないというか……。


でも、この独特のペースは、なんだか少しだけイラッとくる。






「………で、君の名前はー?」


「………椎名由良、です」



「由良ね。よろしくー」

「は、はい……」



差し出された裕太さんの手を、私は戸惑いながらも軽く握り返した。









「椎名さん、ですね」


横からも落ち着いた声がして、私は視線を隣へと向ける。



「私は"月華"副総長の東 李兎(あずま りと)です。…………この度は色々とご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。」



淀みのない敬語に、非の打ち所がないほど丁寧に頭を下げる姿。


(……いかにも賢そうな雰囲気を纏ったメガネ男子だ。)






「えっと………」


「あ、コイツの敬語はクセみたいなもんだから、気にすんな!!……んで、俺は泉 陽人(いずみ はると)。よろしくなっ!!」


チラリと、さらに隣に目を向けると、真っ先に目に飛び込んできたのは燃えるような奇抜な赤髪。


(………赤髪の人、初めて見た。)

この派手な外見で、声のボリュームも人一倍大きい。





「………陽人、そんなに勢いよくいったら、誰だってビビるよ。あ、俺は藤田 大晴(ふじた たいせい)。よろしくね?」


さらにその隣にいたのは、対照的に穏やかな空気を纏った青髪の男子。

少しタレ目の、優しそうな好青年だ。



「あ、えっと……よろしくお願いします……」




圧倒されながらも、私はペコりと頭を下げる。
一筋縄ではいかなそうな猛者たち。


(………全員、個性的だなぁ。)



プロとしての警戒心はどこへやら。


嵐のように自己紹介を繰り広げる彼らのペースに、私は完全に飲み込まれ始めていた。