君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




「よかっ、たぁ………俺のせいで死んじゃったかと思ったよ」



膝をつき、心底安心したように大きな息を吐いたその男。……いや、少年。




(…………誰?)



私の記憶にある「月華」の主要メンバーにはいない顔だ。

けれど、その必死な様子からして、敵ではないことくらいは直感で理解できる。






………というか、


「ここ、どこ…………?」


天井を見上げる。

見覚えのない、けれどどこか生活感のある簡素な部屋。
鼻をくすぐるのは、微かな消毒液と……古い建物の匂い。





「俺、蓮呼んでくる……!!」


「えっ、ちょ、待っ……………」


質問を投げかける暇もなかった。

彼は私の制止も聞かず、弾かれたように立ち上がると、バタバタとあわただしく部屋から出て行ってしまった。









───それから少しして、


「────由良っ!!」



静まり返った部屋に、怒号にも似た叫びが響く。
バンッ、と壁にぶつかるほどの勢いで、ドアが乱暴に開け放たれた。


………入ってきたのは、血相を変えた蓮さんだった。



息を切らし、肩を大きく上下させている。

その額にはさっきぶつけた場所だろうか、赤紫のアザが痛々しく残っていた。




「………起き、たのか。無事で、よかった」



彼は私の枕元まで一気に詰め寄ると、崩れ落ちるように膝をついた。

その瞳には、今まで見たこともないような切実な安堵が揺れている。






「え、あの………」


あまりの剣幕と、彼から伝わってくる剥き出しの感情に、私は次の言葉を失ってしまう。