君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~

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「…………あの、橘花さん」


人気のない非常階段の踊り場。

冷たいコンクリートの質感が、彼女の切迫した気配をより際立たせた。



「…………」

「話、って…………」

「……お願いっ、”あの”ことだけはっ……!!」


振り返った彼女の瞳には、すでに涙が溜まっていた。
小さな肩を震わせ、すがるような視線で私を見つめてくる。



「え、……」

「今まで、ずっと隠してきたの。………バレたら蓮くんを困らせちゃうから。本心は違うけど、やっぱり私は今のままでいっしょに過ごしたかったからっ………だから……」


ぽろぽろと、真珠のような雫が彼女の頬を伝い落ちる。

……隠してきた? 困らせる? 一体、何を?



「あ、あの…………」

「このままの関係でいたかったの。………無理を言ってるのはわかってる。でも……ダメ、かなぁ………?」


潤んだ瞳で真っ直ぐに見つめられ、思わず言葉を失う。



「え、あの、いったいなんの話を…………」

「そんなの決まってるじゃない………!!」


グッと縮まった距離。

モモカの華奢な体から放たれる必死な熱量に、思わずたじろいで背中が壁に当たる。


「た、橘花さっ………」

「私が、蓮くんを好きだってこと……!!」


…………。


「へっ?」









「「────え?」」


重なった声。

私とモモカは、思わず至近距離で目を合わせてぱちくりと瞬きを繰り返した。
彼女の頬にはまだ涙の跡があるけれど、その表情は”あれ?”という困惑に染まっている。


「え、そのこと…………?」

「じゃあ、椎名くんはなんのことだと思って………」

「え、あの……それに心当たりがなかったので困惑して………」


私は毒気を抜かれたように、壁に預けていた力を抜いた。

……なに、それ。


ずっと、そんなことを考えていたの?

別に、バラすつもりはなかったけど……。