「…………蓮さんのこと、好きなんですか?」
唐突に核心を突く私の問いに、それまで激しく暴れていた彼女の背中が、ピタッと嘘のように硬直した。
「………な、んで、それを………」
「僕、人よりも他人の表情を観察する目が優れているんです。だから、そういう特別な感情の動きにも敏感で………」
「っ、なら……なら、なおさら手を離してよ……! 私は、蓮くんのところに行かなきゃいけないの………!」
バタバタと再び遮二無二暴れだす彼女の細い腕を、逃がさないようグッと力を込めて抑え込む。
「……なら、あなたが行って、一体何ができるんですか? 暴力が支配する戦場では、戦闘技術を持たない人間は、ただの足手まといになるだけです……!」
「っでも、もう仲間が目の前でやられるのを、何もしないで待つのは絶対にイヤっ!!!!」
「───────え、」
鼓膜を震わせたのは、突き刺さるような、魂の叫び。
かつて大切な誰かを守れなかった、過去の凄惨な傷跡を剥き出しにしたかのような彼女の圧倒的な気迫。
……それに一瞬だけ気圧され、プロとして鋼のように固めていたはずの指先が、わずかに戦慄した。
───その、一瞬の隙だった。
私の力が微かに緩んだ刹那、バッ、と彼女は私の拘束を振り払い、栗色のツインテールを鋭い風になびかせた。
そして、一切の迷いもなく校舎内への階段へと駆け出していく。
守るべきはずの対象が、自ら危険な戦場へと飛び込んでいく。
私は、遠ざかっていくその小さな背中を、ただ呆然と見送ることしかできなかった────。



