「……よかっ、たぁ………」
ハア、と目の前の華奢な肩から、一気に安堵の力が抜けた。
「それにしても………」
「………なんですか?」
「あなた………蓮くんから聞いていた通り、本当に地味な格好をしてるのね」
「あはは………そうですか?」
困ったように苦笑いを浮かべながら、私は内心で小さく息を吐く。
どうやら”無害な一般人”としての合格点はもらえたらしい。
(でも───────)
「…………逆に、今時そんなキッチリ校則守って、前髪で顔を隠してる生徒なんて珍しいんじゃない?」
「…………」
「せめて、前髪だけでもすっきりさせればいいのに……」
そう言って、彼女の白い手がサラッと私の額へと伸びてきた。
────視界を遮っていた邪魔な前髪が、彼女の指先によって優しくすくい上げられる。
カーテンが開くように急に明るくなった世界の中で、パチリと──至近距離で桃色の瞳と視線が真っ向から交わった。
前髪の奥に隠されていた、少年特有の端正さと、どこか大人びた怜悧さを併せ持つ私の本当の素顔。



