君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



一見すると優しく微笑んでいるように見えるのに、何も映していないその目は、何を考えているのかが一切読めなかった。


……親しみやすさの裏側に、ぞっとするような胡散臭さがべったりと張り付いている。




(……本当に、この強者感のカケラもない男が、この組織のトップなのか?)


あまりの威圧感のなさに拍子抜けすると同時に、ふつふつと強い疑念が湧き上がる。



────確かに底知れない不気味さはある。

だが、俺たちの命をいつでも奪えるような、裏社会のトップが放つ圧倒的な『支配者のオーラ』とは何かが違う気がした。





俺が警戒の目を”サクヤ”から逸らせずにいた────その時だった。



「ゆ~らぁーー!!!!」



どすっ、と重い衝撃音が室内に響く。



……次の瞬間。


視界がブレるほどの突風と共に、俺の少し前に立っていた由良の身体が大きくよろめいた。




────何か黒い塊が、猛スピードで由良の懐に突っ込んだのだ。





「っ、おい──!?」


────状況が掴めず、咄嗟に構えた俺を他所に、由良にすがりついた黒い影がゆっくりと顔を上げる。





その瞬間────



(────!!)


……俺は、思わず息を呑んだ。



黒い大きなパーカーを頭まですっぽりと被った、小柄な少年。


その姿を見た瞬間、俺の心臓は一気に跳ね上がった。