君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~



変わっていない、とはどういう意味だ。


この裏社会の拠点が、か。

それとも、奥で待っている「サクヤ」という人物のやり方が、なのか。





俺が問いかける隙すら与えないまま、案内人の黒スーツが、廊下の最奥にある重厚な両開きの扉の前で足を止めた。




そして────。


由良が扉の脇にあるセンサーに、迷いなく手をかざした。

途端、電子音が小さく鳴り響く。



(……認証された? なんで由良が……っ)




それが、ロック解除の合図だったのか────黒服の男たちがゆっくりと扉を開いていく。







重低音を響かせながら、左右に分かれていく分厚い扉。

……その隙間から、部屋のなかの光景が、ゆっくりと俺の視界に滑り込んでくる。



反射的に身構える俺の視界に滑り込んできたのは──意外すぎる光景だった。





────そこに広がっていたのは、高級ホテルのラウンジか、どこかの一流企業の応接室のような、洗練された静かな空間。



シックな色調で統一されたインテリア、上質な革のソファ、部屋の隅で静かに灯る間接照明。


血生臭さも、こちらを威圧するような支配感も、そこには一切なかった。



(……なんだ、これは)


想像していたよりも、何倍も、何十倍も"普通"だった。