ピッ、と電子音が鳴り、目の前の大きな自動ドアがゆっくりと左右に開いた。
見張りの男たちが無言で顎をしゃくり、俺たちに奥へ進むよう促す。
促されるままに一歩足を踏み入れたその瞬間、俺の背筋に冷たい戦慄が走った。
───外観の華やかさとは裏腹に、一歩入ったマンションの奥は、まるで冷徹な牢獄のよう。
静まり返った長い廊下、等間隔に配置された漆黒の扉。
……そして、すれ違う男たちの、感情の一切を削ぎ落としたような冷たい視線。
(なんだよ、ここ……。マジで住む世界が違いすぎる……っ)
心臓が壊れたような音を立てて暴れ、喉の奥が引き攣るように痛い。
暴走族の抗争なんて可愛いものだと思えるほど、ここにあるのは本物の「暴力」と「権力」の気配だった。
完全に萎縮し、冷や汗で濡れた拳を握りしめることしかできない俺の隣で──。
由良だけは、まるで自分の家に帰ってきたかのように、堂々とした足取りで歩いていた。
あいつが何を考えているのか、その横顔からは一切読み取れない。
……ただ、どこか遠くを見るような、冷めているようでいて酷く複雑な瞳で周囲の景色を見つめていた。
やがて、由良はフッと自嘲気味に口元を綻ばせると、誰に言うでもなく小さく呟いた。
「……変わってないなぁ」
その声は、恐怖に怯える俺の耳にも、ひどく静かに届いた。



