君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




男たちは直立不動の姿勢をとると、由良に対して直角になるほど深く、丁寧にお辞儀をした。


(……は? なんだよ、それ……)



────あまりにも異常な光景に、俺の足がピタリと止まる。


もしかして由良は本当に、この組織の、それも相当な上層に近い人間なのか──?



そう思った、次の刹那だった。





深く頭を下げていたはずの男の一人が、信じられない速さで顔を上げた。


男の瞳からは敬意が綺麗に消え失せ、代わりにぞっとするような凶暴な殺意が宿っている。



「──がはっっ!?」


お辞儀をしたままの体勢から繰り出された、容赦のない痛烈なアッパーカットが由良の顎を正確に捉えた。




鈍い骨の音が響き、由良の身体が反動で大きくのけ反る。




「由良……っ!?」


────悲鳴のような俺の声が夜の空気に引き裂かれる。



俺たちの世界の喧嘩とは、スピードも重さも……本気度も桁違いだ。



アイツを助けなければ──そう思って一歩踏み出そうとした俺の視線の先で、由良はあっさりと起き上がり、口元の血を手の甲で無造作に拭った。




その顔に浮かんだ表情を見た瞬間、俺の足がピタリと止まる。