タダで情報を渡されて、俺が由衣の元へ行けば、由良の『関係ない奴らを巻き込みたくない』という計画はすべて台無しになる。
────それを誰より理解している由良の顔は、怒りと焦りで完全に引きつっていた。
「……おい、待てよ由良」
俺は一歩前に踏み出し、由良の視線を遮るようにその正面に立ちはだかった。
「湊から場所を聞いて、俺が一人でそこに突っ込んでもいいんだぞ? ……それとも、そんなに俺を巻き込みたくないなら、お前が俺をそこへ連れて行けよ」
「……お前……っ」
由良は忌々しそうに奥歯を噛み締め、標的を変え俺を睨みつける。
───俺は、本気だ。
ここで由良が俺のことを突っぱねても、俺は湊の情報をもとに力ずくで由衣を追いかける。
────室内に、本日何度目か分からない、重く張り詰めた沈黙が流れる。
時計の秒針の音が数回響いたあと、由良は大きく、諦めたようにため息を吐き出した。
「……わかったよ」
グッと怒りを無理やり鎮めるように拳を握り締めてから、由良は部屋の出口に向かって歩き出す。
すれ違いざま、あいつは俺の肩を強く小突いて、低く吐き捨てた。
「一人で勝手に突っ込まれるよりはマシ。……ただし、他の仲間は連れて行かないから」
「……ああ」
俺は力強く頷き、その背中を追う。
────振り返ると、部屋の奥で湊が「いってらっしゃい〜」と、満足そうにひらひらと手を振っていた。
そんな締まりのない緩さに今回ばかりは感謝しながら、俺は部屋を後にした。



