───その時だった。
繋がれた手が離れる瞬間、彼女の柔らかな微笑みが、フッと消える。
「………ねぇ」
「はい……?」
「………椎名君、だったっけ。……あなた、一体蓮くんに何したの?」
「へっ……?」
予想外の角度からの追及。
……蓮さんではなく、この場にいる誰よりも警戒心がなさそうに見えた『姫』に一番に疑われるなんて、完全に計算外だった。
先ほどまで無垢に輝いていた桃色の瞳が、今は鋭く不信感にゆらゆらと揺れている。
「蓮くん、昨日あなたに会った後から、ずっと様子がおかしいの。溜まり場に戻ってきてからも、私が話しかけても、ずっと上の空って感じで……」
「…………」
「あなたも………やっぱり『月華』が狙いなの?」
「あなた”も”……ですか?」
相手の言葉のトゲをあえてそのまま拾い、私はきょとんとした顔でオウム返しにした。
「……前に、いたのよ。月華の肩書きや情報が目当てで、一般人のフリをしてメンバーに近づいた子が。………結局、その子が敵チームの手先で、裏切ったお陰で蓮くん、死にかけの大きな怪我をしちゃったんだから」
悔しそうに小さく奥歯を噛み締める彼女を、私は冷静に見つめる。
(……なるほど。お姫様のわりには、結構勘が鋭いと思ったら。過去にそういうトラウマがあったわけか)
けど、この私をハメるには、彼女の警戒心はまだ少し青い。



