「……話、戻すね。それでまぁ、その”待ち伏せをしていた敵”に由衣が連れて行かれた倉庫が、この前のあそこね」
「そんなことは分かってる……っ! あそこには誰もいなかった。俺たちが踏み込んだ時には、もう空っぽだったんだ!!」
冷たいコンクリートに大量の死体が転がっている光景が、脳裏をよぎる。
あそこには、たしかに由衣がいた……はず、だった。
だけど、俺たちが着いた時にはもう遅くて。
────その絶望なら、すでに嫌というほど味わっている。
(今更、何を…………)
「俺が今、一番知りたいのはそこじゃない……! 今、由衣はどこにいるんだ? 誰が由衣をあそこから連れて行ったんだよ!!」
縋るような、叫ぶような俺の問いかけに、湊は残酷なほど静かな視線を返してくる。
一刻も早く答えが欲しい俺を焦らすように、湊はゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「でも、そこにはもう由衣はいなかった。……それって奴らが別の場所に移動させたんじゃないんだよね」
「……あ?」
「捕まっていた由衣を助けて、連れて行ったのは…………」
そこで言葉を区切った湊の瞳に、見たこともないほど複雑な色が混じる。
それは、驚きと、どこか深い諦めのような色。
────敵ではない何者かが、あの倉庫から由衣を連れ去った。
それはつまり、また別の”なにか”が動いているということなのか……?
俺の心臓が、早鐘を打つようにドクドクと激しく波打ち始めた。



