「もしかして……」
小さく零されたその声に、俺はすがるように湊の顔を覗き込む。
だけど───。
「おい、一体何に気づいたんだよ。もしかして……なんだ!?」
「……いや。なんでも、ない…………」
「隠すなよ!! 由衣のことだぞ!?」
掴みかからんばかりに詰め寄る俺から、湊はふっと視線を逸らした。
───その横顔には、いつもの余裕も、悪戯っぽい笑みも一切ない。
何か重い十字架を背負うような、痛々しいほどの沈黙がそこにはあった。
まるで、これ以上踏み込ませないと言わんばかりの、頑なな拒絶。
「……これ以上は、言えない」
「──っ、なんでだよ!」
「……これは由衣だけの問題じゃないんだ。本人の、いや、”あいつら全員”の許可がない限り、一言だって喋るわけにはいかないんだよ」
──あいつら、全員。
由衣の背後に見え隠れする、得体の知れない複雑なつながり。
まるで俺を”部外者”だとでも言うようなその響きに、俺は奥歯を強く噛み締める。
「君を巻き込みたくないからじゃない。……あいつらの人生を守るために、これ以上は言えないんだ」
絞り出されたその声は、かすかに震えていた。
突き放すような湊の言葉に、俺は奥歯を強く噛み締める。
ギリッ、と頭の奥で嫌な音が響くほどに。
───これ以上問い詰めても、こいつはこれ以上口を割らない。
悔しさと焦りで視界が熱くなるのを、必死で堪えるしかなかった。
拳を握りしめすぎて、爪が手のひらに深く食い込んでいく。
そして───俺たちの間に流れる重い沈黙を切り裂くように、湊が小さく息を吐き、再び口を開いた。



