「今からちょうど二週間前かな。……ほら、由衣たちが俺の店に来たことがあったでしょ?」
湊がふっと目を細め、過去の記憶をたどるように首を傾げた。
サラリと流れた前髪の隙間から、妖しい光を宿した瞳が俺を捉える。
「あ、ああ…………」
───脳裏に蘇る二週間前の記憶。
あの日、確かに二人は湊の店にいた。
「あれさぁ、君へのプレゼントを買いに来た以外に、目的があったんだよね」
「は?」
低く、地を這うような声が俺の口から漏れる。
不意に、湊の口元が綺麗な三日月型に歪んで……。
ニヤリと、俺を試すような含みのある笑みを浮かべた。
────けれど、その綺麗な琥珀色の瞳の奥は、一切笑っていない。
ガラス玉のように冷たくて、それでいて昏い光を放っている。
「や、もちろん君への贈り物もちゃんとした目的だったよ?……だけど、他に本当の『目的』があったってこと。」
湊はツカツカと足音を響かせて俺に近づくと、フッ、と顔を覗き込んできた。
──近い。
かするような至近距離で、湊の甘い香りが鼻腔をくすぐる。
そのどこか危険を孕んだ甘い香りが、頭の芯をじわじわと痺れさせていく───。
「……もうわかってると思うけど、俺、情報屋なんだよね。あの日、二人は俺の所に情報を聞き出しに来たんだ。───九条に関することを」
「──っ!?」
九条──その名が出た瞬間、俺の思考は完全にフリーズした。
頭を殴られたような衝撃のあと、じわじわと指先から温度が失われていく。



