「っ、湊…………」
思わず、名前が口からこぼれる。
───どうして、ここに。
「やあ、この前ぶりだね~」
いつもと変わらない、どこか気の抜けた笑み。
けれど────今の俺には、その笑顔が妙に不自然で、胸の奥に引っかかった。
まるで、無理やりつくった偽りの笑み……なんて思ってしまったのは、俺の気のせいだろうか。
「…………湊」
由衣を失った焦りからか……低く、地を這うような声でその名前を呼ぶ。
「────お前、何を知っている?」
問いかけた瞬間、湊は一瞬だけ俺の目を真っ直ぐに見つめ、ゆっくりと口を開いた。
そこにいつもの軽い笑みは、もうどこにもない。
あるのは……いつか一度だけ見た、普段のアイツからは到底想像もつかないほど、冷たく引き締まった真剣な顔だった。
「…………」
ほんの数秒、奴は何かを迷うように視線を落とし、一度だけ固く口を閉じた。
そして────意を決したように小さく息を吐き、再び俺を見た。
「…………実はさ、」
さっきとは打って変わった湊の表情を見た瞬間、俺の胸の奥を、最悪な予感が駆け抜けた。
「今回の件────由衣がさらわれた事、俺に原因があるんだ」
「────は?」
続く言葉を聞いた瞬間、思考が完全に停止した。
頭の中が、一瞬で真っ白に染まる。



