君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




「……っ、由衣……」


震える指先で、左の耳たぶに触れる。


────そこに冷たく触れたのは、由衣が俺にくれたシルバーのピアス。



少し前に俺がアイツにプレゼントしたネックレスと、お揃いのデザインのやつだ。





連れ去られる数日前、あいつがはにかみながら俺の耳につけてくれた、由衣を失う前の最後の思い出。



───そして、離れ離れになってしまった今の俺たちを繋ぐ、唯一のもの。





────『れ、蓮さんの誕生日がもうすぐだって大晴たちに聞いて……こっ、これ……』


耳元に残るあいつの温もりと声が、俺の壊れそうな心をギリギリのところで繋ぎ止めている。




(ああ、そうだ。そういえば今日は、俺の誕生日だったな────)





……ハッ、何やってんだろ、俺。

頭のどこかで、酷く冷めた自分が嘲笑う。




由衣を連れ去った敵への怒りや、何か知っているはずなのに何も教えてくれない由良のことすらも、どこか遠い世界の出来事のように他人事に思えてくる。



────どうせ俺は、またあの頃のからっぽな人間に戻っただけだ。




もう、何もかもどうでもいい。


そうやって暗闇の底へ沈み込もうとした、その瞬間だった。