君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~

♠︎ Ren


あいつに出会うまでの俺は、自分のために生きる理由なんて何ひとつなかった。

だからその命を、ただ他の誰か一人を守るためだけに使い潰していたんだ。


────だけど。


あの日、あの砂浜で。

由衣の涙を見て、彼女の“偽りではない本当の姿”に触れた、あの瞬間に。



桃華の時のように義務感なんかじゃなく、心の底から『由衣に俺のすべてを捧げたい』────本気で、そう思えた。




彼女が、俺のすべてを変えたんだ。

冷めきっていたモノクロの世界に、鮮やかな色をくれた。




今だって、由衣をこの手の中から失うこと以上に、怖いことなんて何もない。


あいつが笑っていられるのなら、俺の命なんてどうなったって構わない。

俺の全部を、喜んであいつにくれてやる。



────それくらいの覚悟は、とっくにあったはずなのに。




あいつを失った今、俺の世界は驚くほど色褪せてしまった。


由衣のいないこの世界で、俺はまた、ただ息をしているだけのあの頃の空っぽな人生に逆戻りしている。




……いや、前よりもずっと酷い。


一度あいつの温もりを知ってしまった俺は、もう由衣なしじゃ、一秒だって生きていられないんだ────……。