君は、狂愛の檻の中 ~偽りの君に恋をした~




──取り残された屋上。


呆然とその場に立ち尽くす彼女の瞳を、私はよく知っている。



過去に幾度となく見てきた、最も厄介で、最も純粋な、この世で一番壊れやすい光。


自分を危険な世界から守ってくれるヒーローに、絶対の信頼と好意を寄せる無垢な熱。



……その眩しすぎる光を、私は仮面の下の冷めきった瞳で、ただ静かに、淡々と見つめ返していた。











バチッと、真っ向から彼女と目が合う。


取り残された屋上で、彼女は不思議そうに私を見つめ、少しして我に返ったように小さく首を傾げた。




「えっと……あなたは……?」


「あ、えと……僕は、椎名由良です。昨日、この学校に転校してきたばかりで……」



私はわざとおどおどした態度で、上着の裾をきゅっと握りしめてみせる。



まさか、初日からこんなに早く最大の護衛対象に直接接触できるなんて。


────これは偶然か、それとも、神様が私に味方してくれたのだろうか。





「えっ……! じゃあ、あなたが……!」


私の名前を聞いた瞬間、彼女の桃色の瞳がパァッと大きく見開かれた。



「僕……ですか?」


「はいっ! 蓮くんがさっき部屋で言ってたの。……なんか今日、屋上ですっごくおもしれー奴を見つけたんだって」