……何百人の敵を前にしても眉一つ動かさなかった無敵の総長が、今はまるで、暗闇に取り残された迷子みたいに怯えている。
───ううん、違う。
迷子なんて可愛いものじゃない。
あの子が、彼女の姿が消え去ったあの瞬間に、この人の生きる理由も、心も、全部一緒に奪い去られてしまったんだ。
────由衣。
俺たちが高校二年生になった今年の四月、蓮が「おもしれー奴見つけた」と言って楽しそうに話していた子。
俺たち……特に、俺と李兎は最初蓮の口から由衣のことを聞いた時、正直疑っていた。
まだ俺たちが未熟な中学生だった頃。
月華の主要メンバーには、もう一人、"烈(レツ)"という男子がいた。
蓮、俺、李兎、陽人、裕太は全員、昔からの生粋の幼なじみ。
烈だけは、中学生になってから新しく加わった外部のメンバーだった。
……けれど、その頃の俺たちはまだ本当に子どもで。
途中から入ってきたとか関係なく、一度交わした絆は本物だと、綺麗事をまるごと信じ込んで疑っていなかった。
───彼が月華に加わってから、約半年が経った頃。
あまりにも月華の情報が外に漏れすぎていることに、まず初めに蓮が違和感を抱いた。
俺たちに余計な心配をかけまいと、蓮はしばらくの間、誰にも話さずひとりで調べていたみたいで。
そして────。
烈が、全国No.3『鳳凰(ホウオウ)』のスパイだと判明した。



