「ひ、っ!?」
殴りかかろうとしていた男が、あまりの衝撃に腰を抜かして床に転がる。
───もうもうと立ち込める白煙の向こう側。
暗闇を割って、懐かしい……けれど圧倒的な死の気配を纏った人影が踏み込んできた。
一年前、私たちの居場所が壊されたあの日、彼らは裏社会のさらなる深淵へと堕ち、本物の『化け物』へと成れ果てていたのだ。
「あ、が……っ!?」
次の瞬間、肉が爆ぜるような鈍い音が響いた。
────悲鳴をあげる暇さえ与えない。
私の顔の前に拳を突き出していた男の首が、あり得ない角度に折れ曲がり、そのまま物言わぬ肉塊となって床に崩れ落ちる。
「ヒッ、おま、誰だ──」
別の男が慌てて銃を抜こうとしたけれど、それよりも早く、侵入者の手が男の胸元へと突き刺さった。
心臓を一突きで破壊された男が、血の泡を吹いて絶命する。
一発。
たったの一発で、男たちの命を容赦なく奪い去っていく。
由良と同じ、いや、それ以上に昏い執念。
私を傷つける者には、塵一つの慈悲も残さない圧倒的な強さ───…
「──、───っ!」
凄惨な血の海の中で、誰かが私の名前を叫んでいる。
────ずっとずっと会いたくてたまらなかった、あの日引き裂かれた懐かしい声。
(あぁ……本当に、みんなだ……)
夢にまで見た最愛の"家族"との再会。
彼らが私を救い、すべての敵を蹂躙してくれたのだと理解した瞬間、張り詰めていた糸がぷつりと切れた。
「由衣────!!!!」
身体からすべての力が急速に抜けていく。
硝煙と血の匂いの中、誰かが私を優しく抱きしめた感覚を最後に、私の意識は深い暗闇の中へと溶けて落ちていった────……



