……私はゆっくりと顔を戻し、乱れた前髪の隙間から、男を真っ直ぐに見据えた。
口元に流れた血をペロリと舐め取り、ふっと冷たく微笑んでみせる。
───その瞳に一切の恐怖が宿っていないのを見て、男はヒッと小さく息を呑んだ。
(……あぁ、これで本当に、終わり。あなたたち、全員終わりだよ)
頬の痛み以上に、私の胸の中は、もうすぐここへ嵐を連れてやってくる『彼ら』への確信で満たされていた。
……けれど、一度暴力を振るったことで変なアドレナリンが出たのか、男たちは次第に下品な笑いを取り戻し始めた。
「……ケッ、強がりやがって。おい、スマホ出せ。このザマ、写真に撮ってやろうぜ」
「お、いいねぇ! ほらお嬢ちゃん、こっち向けよ」
パシャリ、と電子音が静かな室内に響く。
フラッシュの眩しさに一瞬だけ目を細めると、男たちは画面を覗き込んでゲラゲラと下品に笑った。
「へへっ、いい絵が撮れたじゃん。なぁ、これ、あの暴走族に送ってやろうぜ」
「うわ、最高! あいつら、これ見たらどんな顔するかなぁ?」
男たちの口から飛び出した、その名前。
(……蓮さんたちを、巻き込む気?というか、コイツらがなんで月華のことを知っているの?)
かつて引き裂かれた仲間たちとは何の関係もない、ただの私の新しい居場所。



